葛飾北斎作品より「富嶽三十六景 凱風快晴」り・デザイン
秋田昌子は自らの造形作品を「板画イタエ」と名づけ、商標登録している。「板画イタエ」の実際の製作は、秋田自身では行われない。デザインのプロトタイプが考案された後、職人が「板画イタエ」を製作する。その意味で、彼女は芸術家でなくデザイナーである。ここから連想されるのは、浮世絵を模写したゴッホの油彩画である。しかし、ゴッホの場合は、浮世絵の色や構成を油絵具とゆうメディウムの変化によって”再現”をおこなっただけである。ここにはファン的な憧れが介在していた。それに対して秋田は、浮世絵を”再現”するのでなく”再構築”している。この行為は対象が対等なものとして置かれている。秋田は「板画イタエ」によって、対象をり・デザインし表現の新たな可能性を提示してみせてくれる。これはゴッホをはじめとした、かってのジャポニストたちの姿勢とは全く異なる斬新なものである。
    エコール・ド・セゾン〔ラ・セゾンより抜粋〕